白と緑のミクロの森

地衣類・蘚苔類と共に生きる─コケ学のススメ

コケ学のススメ(五段階仮説)

第一段階:コケに気づく

それまで“地”として見過ごしてきたコケ(地衣類と蘚苔類)が、ある日“図”に変わり、目に留まるようになります(ゲシュタルト変換)。コケはいろんな場所に生えているので、一度コケに気づくと次々とコケが見つかり、コケに対する関心が高まっていきます。

第二段階:コケを知る

コケの名前を知りたくなりますが、近くに教えてくれる人はいないし、ネットで調べてもよくわかりません。コケの入門書や一般向けのコケ図鑑を読んで、コケの基礎知識を入手しても、コケを見分けることは難しく、ほとんどのコケはわかりません。そこで、博物館、学会、同好会、有志の方が行っている観察会や講習会に足を運び、コケの見分け方だけでなく、分類、形態、生態といった学問的知識を学ぶことで、コケの名前がわかるようになり、理解を深めていきます。

第三段階:コケに学ぶ

コケは(1)共生、(2)進化、(3)環境、(4)文化といったさまざまな事を教えてくれます。 (1)共生:地衣類は菌類と藻類やシアノバクテリアとの共生体であり、蘚苔類の中にもシアノバクテリアと共生している種がいますので、違う者どうしが協力して生きていく知恵をコケから学ぶことができるでしょう。 (2)進化:コケは4億年以上前に陸に上がった生物の末裔ですので、様々な苦難を乗り越えて生き延びるための戦略を教えてくれます。また、コケの化石や遺伝子を調べることで、生物の進化に関する新たな知見が得られます。 (3)環境:コケの中には汚染に強い種もいれば弱い種もいて、汚染の度合いによってその環境に生育するコケが異なることから、コケを見ればその生育環境がきれいか汚いかがある程度わかります。 (4)文化:コケは古くから歌や詩に詠まれ、茶室の露地に彩りを与える重要な要素でもあり、日本文化を象徴する生物と言えるでしょう。

第四段階:コケを通して自分を知る

コケの理解が深まり、いろんなコケ好きの人と出会うことで、次第に広い視点でコケを見つめることができるようになるでしょう。さらには、コケを見ている私、というものを一歩離れて眺めることができるようになるかもしれません。いずれにしても、コケを通していろんな意味で視野が広がった結果、自分の見方や考え方に気づき、自分を知ることになるでしょう。

第五段階:コケと共に生きる

コケを愛で、コケの変化に季節や環境の変化を感じ、コケの知恵に学びつつ、コケの鏡に映った自分を認めながら生きていく。コケ学とは、コケと共に生きる、生き方そのものです。

Article Info

created: 2022年 6月 19日 日曜日 23:23:25 JST
modified: 2022年 7月 17日 日曜日 09:24:29 JST
views: 5462
keywords: コケ学, コケ, 地衣類, 蘚苔類, 環境

Social Links



(C) 2020 Hiromitsu Nakajima